「会社を始めよう!」と思っても、いきなりその日からはじめられるわけではありません。事業計画の策定、資金の調達、法人登記など、新しく会社を始めるに当たっては、さまざまな準備をしなくてはならないからです。
起業時に特に入念な準備が必要となるのが、オフィス選びではないでしょうか。立地選びや、広さや間取りの検討、賃料の適切な設定など…。特に最近は新しいオフィススタイルも増えており、選択肢が増えたことから、選定のポイントが絞りにくくなっていると言えるでしょう。
そのため、オフィス選びの情報収集はとても大切で、事業成功のカギとも言えるのです。今回のコラムでは、起業時にオフィスを選ぶ際のポイントをご紹介します。これから会社を立ち上げようと考えている起業家の皆さんが「なるほど!」と思えるような情報が満載です。
多くの起業家が創業期に金銭的苦労に直面
起業時は賃料をできるだけ抑えめに
中小企業庁のまとめた『中小企業白書2023』によると、経営者が起業の準備段階で生じた課題として挙げたのは、多い順に「経営に関する知識・ノウハウの不足」「資金調達の目処がつかない」「時間的な余裕がない」「収入が減少した」というものでした。この結果から分かることは、多くの企業が創業期にお金の面で苦労したということです。
新たに事業を始めたばかりの企業は、通常、「売上の見通しが具体的に立っている」とは言えません。顧客や知名度がまだ不足しているため、これは当然のことです。
だからこそ、収益が増し、経営が安定するまでは、何をするにおいてもコストを最優先すべきではないでしょうか。もちろんオフィス選びもその例外ではありません。不必要に高い固定費を払って経営を圧迫してしまっては、せっかく起業した意味がありません。高望みをせず、賃料をできるだけ抑え、身の丈にあったオフィスを選ぶことが最も考慮すべき大切なポイントになります。
オフィスのスタイルを知ることが
良いオフィス選びの第一歩
オフィスを選ぶ際には、まずどのような種類のオフィスがあるのかを知ることが大切です。その中から総合的に判断をして、自分の会社に合った最適なオフィスを選ぶとよいでしょう。主なオフィスは以下の通りです。
■自宅兼事務所
個人事業主など、一人で起業する人の多くが自宅の一部を事務所として利用しています。通勤にかかる時間や費用、賃料や光熱費などのコストが抑えられるというメリットがある一方で、仕事とプライベートの境界線が曖昧になり、しっかりと自分を律しないと、仕事が疎かになってしまうというデメリットもあります。
■賃貸オフィス
不動産会社と契約を結び、オフィスビル内のスペースを借り受けるタイプのオフィスです。多くの社員を雇用している企業の場合、まずはこうした賃貸オフィスを探すのが一般的ではないでしょうか。
賃貸オフィスはスペースを自由に使用できるため、内装やインテリアなどをカスタイマイズできる利点があります。ただし、敷金、礼金、保証金、改装費用、引っ越し費用など、多くの面でコストがかかるため、売上がすぐに見込めない場合には、相応のリスクが伴うことになるでしょう。
■サービスオフィス
高い付加価値の付いたサービス付きのレンタルオフィスです。一般的にビジネス街や繁華街に位置し、ビジネスを展開するのに便利な立地にある上、共用のラウンジやミーティングスペース、デスクや椅子といったインテリアなど、オフィス環境が整っているのが特徴です。
賃貸オフィスと比べて賃料が安いなど、入居に当たってのハードルが低いことから、新しいオフィスのスタイルとして注目されています。
■コワーキングスペース
複数の入居者がワークスペース内であれば好きな場所で仕事をすることができるフリーアドレスタイプのオフィスです。個室や占有スペースがない分、賃料などは大きく抑えることができますが、情報の漏洩のリスクや、来客対応の制限があるなどのデメリットがあります。
■バーチャルオフィス
実体のない仮想事務所のことで、法人登記の住所として使用できます。運営会社によっては、郵便物や電話の転送や秘書代行といったサービスを行っているところも。
普通にオフィスを構えたら、とんでもない額の賃料を払わなければならないような都心の一等地に会社を登記することができるため、対外的な信用を高めたいと考えている企業にとっては検討の価値があるタイプのオフィスになります。ただしあくまでバーチャル(仮想)なので、実務を行うスペースを別に確保する必要が出てきます。
■インキュベーションオフィス
国や地方自治体といった公的機関や、大学などの研究機関が出資して建設・運営する施設です。入居には審査が必要ですが、スタートアップや新しい事業を始める起業家のコスト負担を減らすため、賃料などは低価格で設定されています。
主なオフィスのスタイルは以上です。この中から会社に合ったスタイルを選んでいくことになりますが、「自分が会社を始めるならこのスタイルが良い」というものが見つかったでしょうか?それでも迷ってしまうという人は、これらのスタイルがあることを踏まえて、次の項目で挙げるポイントを参考に考えるとよいでしょう。
賃料やコストだけではない、オフィス選びのポイント
実際にオフィス選びをする時のポイントは、会社の規模や事業内容によって優先順位は変わってきます。以下のポイントを踏まえて、会社に合ったオフィスを選んでみてください。
ポイント① 創業期の社員数
例えば一人で起業し、商圏が自宅の近くにある場合は、わざわざお金をかけてオフィスを借りる必要はなく、自宅兼事務所で十分ではないでしょうか。
一方で10人以上の社員を抱える企業では、初期コストはかかるかもしれませんが、じっくり腰を落ち着けてビジネスを展開していくと言う意味でも、一般的な賃貸オフィスを選択するのが無難でしょう。
複数人で会社を立ち上げる場合は、初期コストや賃料などの月々のランニングコストを抑えつつ、駅近の便利な場所にあるケースが多いサービスオフィスやコワーキングスペースを活用すると時間のロスがなく、スピード感を持って事業のスタートを切ることが可能となります。
ポイント② 立地
取引先との打ち合わせが多い企業の場合、オフィスの立地条件を最優先にすることをお勧めします。まずは取引先の最寄り駅周辺で良いオフィスがないか探してみてはいかがでしょうか。
社員が複数人いる場合は、通勤しやすさを考慮することも大切です。今後、若い人材を積極的に採用したいと考えているのなら、渋谷や新宿など、若者に人気のエリアでオフィスを構えることも一つの選択肢です。
ポイント③ 拘りたい条件を整理しておく
オフィスを選ぶ際、賃料や立地などについ目が行きがちですが、仕事をする上で「ここは譲れない」という部分を洗い出しておき、オフィスの内覧時に確認しておくことも大切です。
取引先がよく訪れるという会社の場合は、建物の外観やグレードにも拘りたいのではないでしょうか。大切なお客様を迎えるにあたり、築年数が古い建物やみすぼらしく見える建物は避けた方が良いでしょう。
社員同士のミーティングや取引先との打ち合わせをよく行う企業の場合、会議室を常設しておく必要があります。必要となるデスクなどの設備や配置を検討し、広さや使い勝手を事前に確認しておくことが大切です。
事業を推進していくためにオフィスに求める条件は企業によって千差万別です。拘りたいポイントを事前にしっかり踏まえ、プライオリティをつけておくことも大事なポイントになります。
冒頭でも触れたように、起業時は様々な初期費用がかさむため、オフィスの賃料などのコストをできる限り抑えることが重要です。ただし、コスト削減に過度に焦点を当てすぎてもいけません。必要な機能や設備を備えていないオフィスを選んでしまうと、業務効率が悪くなるなど、逆にコストが高くついてしまうことになるからです。
ここで挙げたポイントを考慮しながら、コストと業務効率のバランスを良く考えてオフィスを決めることが大切です。ビジネスのスムーズなスタートを切るためにも、以上を参考に条件に合ったオフィスを見つけてください。