働き方改革やテレワーク普及の影響により、快適なオフィス環境を求める声が高まっています。働く環境が見直され、生産性の高いワークスペースや、仕事のモチベーションが増すようなオフィスを求める人が増えているからです。
オフィスデザインを手がける企業の調査によると、約8割の人が「オフィス環境は日々の業務活動に影響を与える」と回答しています。また、この調査によると、コロナ禍によりテレワークが浸透した現在でも、週に5回以上出社している人が全体の8割を超えています。
その一方で、オフィス環境に満足している人は2割にも届きませんでした。世の中のビジネスパーソンの多くがオフィスで勤務しているのにも関わらず、オフィス環境に何らかの不満を抱えていることがわかります。
また、「オフィスに求めているものは何か」という問いに対する回答からは、以下のような要望が浮き彫りになっています。
・業務に集中できる環境が整っていること
・狭さを感じない広い空間が提供されていること
・個々の仕事や身体に合ったデスクの広さが確保されていること
これらの回答からも、多くの働き手が快適なオフィス環境を望んでいながらも、生産性の低い環境に身を置いている様子が伺えます。
一方で、空間デザインやインテリアにこだわった魅力的なオフィス環境を整える企業が最近では増えてきています。社員のモチベーションを高め、業務効率を向上させるために、企業側も働く人々の要望に応えようとしています。
実際に生産性の上がるオフィス環境とはどのようなものでしょうか。事例を挙げて紹介します。
Case1:多目的スペースでコミュニケーションを活発に
最近、多くの企業が積極的に導入を進めているのが休憩スペースやオフィスラウンジです。これまでは、オフィスの隅に申し訳程度に設置する企業が多かったようですが、社員間の交流を促進するなどの理由でスペースも予算もかける傾向が強くなっています。
とあるマーケティング系の企業では、オフィスの中央にソファ席や書棚などを設置して、誰もが自由に利用できるラウンジとして活用しています。利用する人の目的は、「次の仕事に取り掛かる前に気持ちをリセットするため」「アイデアに行き詰まった時に何かヒントを得るため」など、人によって様々のようです。
部屋の中央にあるため利用しやすいのか、繰り返し利用する人が多くいるとのこと。部署の違う人との交流が生まれるなど、職場に活力を与える場所になっているそうです。
”憩いの場”はこれからのオフィスのトレンドに
2023年に企業の総務担当者を対象に「これからのオフィスの役割とは何か」を尋ねた調査では、「社内コミュニケーションの場」との回答が約9割を占めました。この結果からも、休憩スペースやオフィスラウンジの設置は、これからのオフィスのトレンドになると言えそうです。
Case2:魅力的な空間を演出し、出社することが楽しくなる会社に
せっかくなら、洗練されたデザインのオフィスで働きたい――流行に敏感な若い世代ほど、ワークスペースにデザイン性や、魅力的な雰囲気を求める傾向が強いようです。
都心で店舗開発を手がけるある企業では、「クリエイティビティを高める」とコンセプトに基づき、オフィスのリノベーションを行いました。壁はコンクリートの打ちっぱなし、吹き抜けの高い天井にはサーキュレーターを据え付け、モダンなデザインのデスクや椅子を配置しました。
洗練された雰囲気に様変わりしたオフィスを見たとき、多くの社員から「職場とは思えない」と驚きの声が上がったそうです。特に女性社員からの評判が良く、「気分が上がって、出社するのが楽しい!」と前向きな気持ちで業務に取り組む人が増え、その効果が表れています。
特に若い世代は、デザイン性の高いオフィスで働くことでモチベーションが向上する傾向に
内装ブランドを手掛ける企業が、全国の20〜30代の男女を対象に行ったアンケート調査でも、その傾向は明らか。調査によれば、7割を超える若手社員が「デザイン性の高いオフィスで働きたい」と考えていることが分かりました。
Case3:明るい差し色が職場に活気をもたらす
業務に集中できるようにとの思いがあるためか、デスクや椅子、あるいは壁や床のじゅうたんなどは、できるだけシックで落ち着いた色使いが好まれる傾向にあるようです。
書籍やウェブサイトを制作するクリエイティブ系のある企業では、グレー系の落ち着いた色使いを基調としつつも、床面の一部や椅子の背面などに明るい黄色を差し色として使い、明るい職場空間を演出しました。
雰囲気の良さが背中を後押しするのか、社員間のコミュニケーションも活発に行われるようになったそうです。仕事の質にも変化が見られ、元気よく活気あふれるワークスペースから、質の高いコンテンツが数多く生まれています。
色によって期待できる効果は異なる?
色彩心理学の研究家によると、オフィスの配色は業務の質や効率に影響を与えるそうです。例えば青などの寒色を使ったオフィスでは集中力や心の落ち着きを与えると言われています。一方、ここで取り上げた黄色をはじめとする暖色を使ったオフィスではモチベーションやコミュニケーションの向上が期待できます。
Case4:フリーアドレスで部署間のコミュニケーションを促進
スペースの有効活用や社員同士のコミュニケーションの促進を理由に、社員の席が固定されていないフリーアドレスを採用する企業が増えています。
機械メーカーのとある企業でもフリーアドレスを導入していますが、ひと工夫を加えたことで、さらなる効果を生み出しているそうです。そのひと工夫とは、部屋の中をエリアで色分けしたこと。例えば、緑のエリアではマットやインテリアを全て緑で統一するようにしたのです。
社員はその日の業務内容や気分によって、どの色のエリアで仕事をするのかを決めることで、業務への集中度がフリーアドレス導入前と比べて増しているそうです。
また、同じエリアで仕事をする顔ぶれが毎日のように変わることで、社員同士のコミュニケーションが促進され、部署をまたいだプロジェクトなどもスムーズに進行できるようになったそうです。
フリーアドレスを導入している企業の割合はまだ多くありませんが、今後も社員間のコミュニケーションを重要視する企業では、フリーアドレスの導入が増加していくことが予想されます。
それぞれの会社に合ったオフィス環境がプラスの効果を生み出す
サービスオフィスという選択肢も
「十人十色」という言葉がある通り、理想のオフィス環境は会社の数だけあるのではないでしょうか。今回ご紹介した事例は、魅力的なワークスペースを整えたことで社員の能力を引き出しやすくし、社内のコミュニケーションを活性化させるなど、多くのプラスの効果をもたらしています。
まだオフィス環境を整えることができていないという企業は、これらの事例を参考に働きやすくて魅力的なオフィスを実現してはいかがでしょうか。しかし内装変更や家具の入れ替えなどは、費用や時間もかかるため、簡単に今のオフィスを改装できるわけではないでしょう。
そこで選択肢の一つになるのがサービスオフィスではないでしょうか。その多くは、都心にあるデザイン性に優れたオフィスで、オフィススペースから個人で使えるコワーキングスペースや個室ブースまで、さまざまな就労形態が可能となるのも魅力的です。初期費用の負担が少なく済むのも大きな利点だと言えるでしょう。
「仕事の生産性をアップさせたい」「若い人材を確保したい」と考えている企業は、オフィス環境の見直しからスタートしてみることをお勧めします。