働き方の多様化が進む昨今、固定観念にとらわれず自由な発想でワークスタイルを確立する人が増えています。
ビジネスパーソンにとってのオフィスの定義は、昔と比べて随分と変化しているのではないでしょうか。
例えば、コロナ禍により自宅で仕事をするテレワークが急速に浸透したのは記憶に新しいところ。ところが、ここ最近はオフィス回帰の傾向が見られます。
その理由は、オフィスの価値が見直されているから。社員同士が顔を合わせる場所、あるいは、顧客と商談をする場所として、特に小所帯の企業では、便利で手軽なサービスオフィスの需要が高まっています。
ここで言うサービスオフィスとは、インターネット回線やオフィス什器などの環境が整った高付加価値のサービスを提供している賃貸オフィスのこと。実際に利用するにあたって、押さえておくべきポイントを4つのフェーズに分けて紹介します。
フェーズ① プランニング
目的を明確化することがオフィス移転の第一歩
サービスオフィスに入居する一番のメリットは、一般的なオフィスを借りるよりも、初期費用や労力を少なく抑えられることです。それに加えて、都心の便利な場所にあることや、清潔感があって快適なオフィス環境を整えていることなども人気の理由に挙げられます。
手軽さがウリとはいえ、実際に入居するにあたっては、それなりの準備が必要なのは当然のこと。まずは、適切な計画を立て、その計画に基づいて行動をする必要があります。この段階でのポイントを紹介しましょう。
オフィス移転のポイントは「営業」「来客」「採用」
「今後の営業展開を考え、同業者の多いエリアにオフィスを構えたいと思っていました」(ITベンチャー)
「お客様に気軽に立ち寄ってもらえるよう、場所とビルの見た目にはこだわりました」(士業)
「若い人材を採用したいので、彼らに人気の渋谷の近くで良い物件を探していました」(スタートアップ)
クロスオフィスの入居者に話を聞くと、企業によって利用の目的は様々です。そうした声を精査していくと、大きく3つの目的に分類できることが分かりました。その3つの目的とは、「営業」「来客」「採用」です。
営業目的で入居をする企業がポイントにしているのは、立地。「取引先が近くにある」「交通の便が良い」といったアクセスや利便性が、移転にあたっての主な条件となっていました。
来客目的で入居をする企業がポイントにしているのは、ビルのグレード。特に士業など来客が多い仕事ほど「きれいなオフィスではないと、恥ずかしくてお客様を迎えられない」と考えるケースが多く、築年数の古い一般のオフィスビルよりも比較的新しくて清潔感のあるサービスオフィスが好まれています。
採用目的で入居をする企業がポイントにしているのは、エリア。若い人ほど働くエリアを重要視する傾向が強く、人材を積極的に採用したいと考えている会社は、総じて新宿や渋谷、六本木といったエリアへの移転を希望していることが分かりました。
上記の目的以外にも、「テレワークで孤独感を味わった社員のモチベーションを上げるため、社員が集まれる場所を作りたかったから」といった、“社員ファースト”の理由でサービスオフィスへの入居を決めた企業もあります。
いずれにしろここで重要なのは、入居に当たっての目的を明確に打ち出すことが大切だということ。目的が曖昧なまま移転を進めても、労力と費用の無駄遣いということになりかねません。オフィス移転の道のりは、目的を明確化するという第一歩から始まるのです。
無理のない移転スケジュールを立てる
目的がはっきりとしたら、次は移転計画の策定というフェーズに移ります。
その際に意識すべきことは、「いつ(When)」「どこへ(Where)」「いくら(How much)」の2W1H。この3つの条件が整わない限り、移転話は前へ進みません。
中でも意外と見落としがちなのが「いつ(When)」の項目です。今日思いついて、明日から実行するという訳に行かないのがオフィス移転。
例えば、現在入居しているビルを解約する場合でも、数カ月前には通知しておかなければなりません。他にも移転前後にやっておかなくてはならないことがあれこれとあるのです。
どういった手続きが必要になるのかをあらかじめ洗い出しておき、きちんとスケジュールを立て、その通りに消化していくことが大切になります。
以下にチェックしておきたい内容をまとめておきました。これだけの作業があることを念頭に無理のないスケジュールを立てるようにしてください。
■現在入居しているオフィスへの解約通知
→ビルによって期間は異なりますが、通常は2〜6カ月前に申し出が必要。
定期借家契約であれば契約期間賃料を全て支払って解約するしかないケースもあります。
■現在入居しているオフィスの原状回復
→場合によっては工事が必要になるケースも。移転が決まったら速やかに業
者を呼び、金額や工期を確認しておく。
■取引先への案内
→移転の旨を伝える案内状を作成しておく。
■ホームページや名刺の住所変更
→移転日までに業者へ手配しておく。
■各省庁(法務局や税務署など)への移転手続き
→法務局への移転登記は移転日から2週間以内。引っ越し後は忙しく忘れがちになるため、移転後のこともスケジュールに組み込んでおく
フェーズ② リサーチ
百聞は一見にしかず。内覧は複数物件を
オフィス移転において最も大切なフェーズが物件選び。目的や条件を満たした物件が見つかるかどうかは、その後のビジネスにも影響を及ぼすがあるからです。ここでよくありがちなのが、自分の目でオフィスをしっかりと確かめずに契約をしてしまうこと。
移転後にもっと条件の良いオフィスが見つかり「慌てて契約をしなければよかった…」などと後悔をする事態だけは避けなければなりません。
後悔しないためには、とにかく現地に足を運ぶこと。「これは」と思う物件があれば内覧へ行き、じっくり吟味することがポイント。1件見ただけで決めてしまわず、複数件を回って最適なオフィスを見つけ出しましょう。まさに「百聞は一見にしかず」です。
3〜4件に候補を絞り、必ず足を運ぶこと
例えば、「クロスオフィス」の場合、約6割のお客様が仲介業者に勧められて入居を決めています。中には「ひと目見て気に入った」などと1物件を見ただけで入居を決めた企業もありますが、後悔しないためには複数の物件を内覧することをお勧めします。
仲介業者に依頼する場合は「複数の施設を見たい」と伝えることが大切。業者に頼まず自分で探すという方も、必ず複数の物件を見るように心がけましょう。
ただし、たくさんの物件を見てしまうと、逆に決められなくなるので、場所や価格などの条件を基に3〜4件をピックアップ。それぞれの物件を実際にその目で確かめ、比較・検討した上で決断をすれば、後になって「他も見ておけばよかった」と嘆くことはないはずです。
細かいチェックがオフィス移転成功のカギ
内覧へ行っても、ただ漫然と見学をするだけでは、貴重な時間を割いた意味がありません。自分なりのチェックポイントをいくつか用意し、実際にそこで働いた時のことを想像しながら見学をすることが大切です。
以下に挙げるのは、普段は見落としがちですが、いざ働き出すと意外と気になってしまうポイント。「神は細部に宿る」という言葉もある通り、オフィス移転を成功させるためには、細かいところまでしっかりチェックすることをお勧めします。
内覧時のチェックポイント
■備え付けのデスクや椅子は試してみる
→長時間使うものなので、使い勝手は重要。高さの調節ができるかどうかや座り心地をチェックしておく
■天井の高さや照明の明るさ
→天井が高く、部屋が明るいとそれだけで部屋全体が広く感じる
■廊下などの共有部分の広さ
→専有部分のスペースを有効に活用できているかどうか。共有部分が無駄に広いと専有部分が手狭になりがち
■壁は厚み。隣の部屋の音が聞こえるか
→コワーキングスペースとして活用することが前提となっているレンタルオフィスは総じて壁が薄い傾向にある
■時間外空調の費用は含まれているか
→後のトラブルの元なので確認しておくと良い
■トイレの場所。フロアに設置されているか
→古いビルをリノベしたオフィスの場合、トイレがそのフロアになく不便な場合も。特に水回りに関しては女性の不満が溜まりやすい場所なので注意が必要
フェーズ③ 準備
移転後すぐに仕事ができるよう、準備は念入りに
内覧を終え、転居先が決まったら、ホッとひと安心…ではありません。移転に向けてまだまだやらなければならないことは、いろいろと残されています。
入居前に確認しておくべきこと、用意をしておかなくてはならないものなどを紹介します。
知っておきたい初期費用のこと
入居に当たって、必須となるのが初期費用の支払い。ある程度まとまった額が必要になるのであらかじめ準備をしておくと良いでしょう。例えば、一般的な賃貸ビルの場合、保証金として家賃の半年〜1年相当の額を用意しなければなりません。
一方、クロスオフィスのサービスオフィスを利用する場合は、契約形態にもよりますが、前払いの他に保証金として家賃の3カ月〜6カ月相当の額が初期費用となります。
また、保証金についてはクロスオフィス指定の保証会社と契約することで家賃の1カ月程度に削減をすることも可能になるため、一般ビルへの移転と比べて初期費用をかなり抑えることができます。
挨拶状や名刺の手配は…? To Doリストを活用しよう
オフィス移転に当たっては、官公庁への届け出など様々な事務手続きを踏んでおく必要があります。また、差し当たって必要になるのが、取引先への挨拶。挨拶状を送るのはもちろんのこと、電話やメールで移転の旨を伝えておくことが大切です。
特に営業目的で移転した場合は、取引先とのコンタクトは早めを心がけると良いでしょう。新しい住所が記載されたWEBサイトや名刺は、余裕をもって準備をしておくように心がけてください。To Doリストを作っておくと、漏れなく移転準備が進められるのでおすすめです。
フェーズ④ 契約
契約時に気をつけておきたいこと
移転する物件が決まったら、入居審査を経て、晴れて契約となります。特に入居審査は安全を担保するためにも必要な手続きです。解約時の注意点も併せて紹介します。
必要書類はあらかじめ準備しておこう
クロスオフィスでは法人はもちろん、個人事業主とも契約できます。また、個人事業主が移転後に法人を設立した場合は、個人契約から法人契約へ切り替えることも可能です。
契約に当たっては以下の書類が必要となります。
【法人契約の場合】
・申込書
・会社概要(事業内容・株主構成がわかるもの)
・印鑑証明書(3カ月以内のもの)
・履歴事項全部証明書(3カ月以内のもの)
【個人契約の場合】
・申込書
・事業概要(事業内容がわかるもの)
・経歴書
・身分証明書写し(運転免許証、パスポートなど)
・印鑑証明書(3カ月以内のもの)
・収入証明書3年分
入居審査は安心して働くための通過儀礼
書類が全て揃ったら、入居審査を実施します。これは、オフィスの安全性を担保するために必要なものとご理解ください。
クロスオフィスでは入居する企業に対して審査が行われ、セキュリティーカードが発行されます。企業内のメンバーであればセキュリティーカードを使用することができます。また、クロスオフィスでは審査を通過した企業のみが入居できるため、入居者は安心して仕事に集中することができます。
退去時のことも頭に入れておく
クロスオフィスのサービスオフィスプランの場合、解約する際には、3カ月前に申し出てもらう必要があります。
この際、注意が必要なのが、原状回復工事が必要となること。退去の際には、原状回復の費用が必要になることも、契約する際には念頭に置いてください。
以上、駆け足ではありますが、サービスオフィスへの入居の流れに沿って、抑えておくべきポイントを紹介しました。
より良いオフィス選びに役立ててもらい、御社のビジネスの更なる発展を願います。