1.はじめに
企業規模を問わず、選択的週休3日制の導入が経営者の関心事となってきています。
選択的週休3日制とは、希望する従業員に対して1週間に3日間の休日を付与するという制度です。2021年6月18日に閣議決定された、骨太方針2021といわれる「経済財政運営と改革の基本方針2021」※1において、選択的週休3日制について「育児・介護・ボランティアでの活用、地方兼業での活用などが考えられる」と説明されており、今後、多様な働き方の一つの形になると考えられます。
※1:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2021 日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」P23
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/2021_basicpolicies_ja.pdf
2.現在の状況
2021年3月に東京都産業労働局が公表した「働き方改革に関する実態調査(概要版)」(図表1)によれば、週休3日制を既に導入している企業割合は2.2%となっており、今後導入をしたい企業割合は5.9%です。従業員への調査によると今後導入して欲しい制度は、週休3日制が54.5%と最も多くなっています。
<図表1> 多様で柔軟な働き方
(出典) 東京都産業労働局「働き方改革に関する実態調査(概要版)」P17-18
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/toukei/koyou/docs/gaiyou_hatarakikatakaikaku.pdf
3.選択的週休3日制の導入メリット
通院、介護、育児など働くにあたってのこのような制約事項は、長時間残業が当たり前であった時代では離職要因となっていましたが、働き方改革によって、働き続けることができるようになってきています。さらに週休3日制で働くことが選択肢として加われば、従業員が離職せず働き続けられるチャンスが広がることでしょう。
また、求職者が週休3日制を導入している企業を優先して応募することも考えられ、現在働いている従業員のみならず、外部人材の確保という点でも有効な制度であると考えます。
4.選択的週休3日制の運用
選択的週休3日制を導入する場合、今までのように1日8時間労働を維持しながら単純に休日を1日増やすという方法と、1日の労働時間を増やして休日を1日増やすという二つの方法が考えられます。前者の場合、仮に1週間の労働時間がこれまで40時間であった場合、週休3日制を導入することによって1週間32時間労働ということになりますので、処遇面を必然的に見直す必要があります。特に対象者が少ない場合においては、単純に32時間労働とした方が迅速な導入ができます。
一方で後者の場合、例えば、1日の労働時間を従来の8時間から10時間に変更することによって1週間の労働時間は40時間で維持できますので、処遇面の見直しは必要ないと考えることができます。
大手企業は、従業員の対象母数が多いため処遇面の見直しが必要ない方がやりやすいためか、後者を選択しているケースが多いようです。
もっとも、1日の労働時間が10時間と設定することによって各日2時間の時間外労働が発生することになり、割増賃金といったコストアップ要因が発生することになります。この点を回避するには、必然的に1カ月単位の変形労働時間制を導入することを視野に入れることになります。
1カ月単位の変形労働時間制とは、1カ月以内の期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間以内になればよいという制度であり、あらかじめ労働日や労働時間を決めておくことで特定の日に8時間を超過したり、特定の週で40時間を超過したりしても、その時間についての割増賃金の支払いは不要となるため、業務の繁閑があらかじめわかっているような業界においては幅広く活用されています。
この制度の活用にあたっては、労使協定や就業規則などによって、起算日や各日の労働時間などを具体的に定めておく必要があり、その期間の労働時間を平均して1週間あたり40時間以内であることが求められます。図表2が厚生労働省で求められている要件一覧になりますが、導入を検討するのであれば、こられを参考に変形労働時間制の運用を考えていってもよいでしょう。
<図表2> 1カ月単位の変形労働時間制の要件
(出典) 厚生労働省「1箇月単位の変形労働時間制」導入の手引き
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/ikkagetutani.pdf
5.最後に
企業規模を問わずすべての企業において多様な働き方の導入が加速しており、さまざまな策を講じながら優秀な人材の確保や定着に繋げています。また働き方改革の推進によりテレワークを積極的に取り入れている企業が増加しており、これにともないオフィス環境の見直しに着手されている企業も増加しています。シェアオフィス・レンタルオフィス・コワーキングスペースなどオフィス形態の選択肢も増えており、優秀な人材確保のためにも、オフィスの最適化も同時に進めてみてはいかがでしょうか。